民法には、遺言できる事項の定めがあります。
具体的に挙げると、次の通りです。
・未成年後見人または未成年後見監督人の指定(民839・849)
・相続分の指定(民902)
・遺産分割の指定又はその委託と禁止(民908)
・遺産分割の際の担保責任についての定め(民914)
・遺贈(民964)
・遺言執行者の指定またはその委託(民1006)
・遺贈の減殺に関する別段の定め(民1034)
以上の事項は遺言でしかできません。
一方、次の事項は遺言によっても可能ですが、遺言に依らず生前に行うことも可能です。
・子の認知(民781②)
・相続人の廃除とその取消(民893・894②)
・一般財団法人の設立(一般社団法人152②)
・特別受益者の持ち戻し免除(民903③)
・祭祀主宰者の指定(民897)
・信託の設定(信託3②)
・保険金受取人の変更(保険77・73)
上記以外の事項を遺言に残しても、法的効果はありません。
しかしこれ以外にどうしても遺言に残しておきたい事、例えば<葬儀の方法>や、<遺言の主旨>、<残る家族へ託す思い>などは、法的効果はありませんが「付言」を活用して書き残すことをお勧めします。
その他に細かい表現のことですが、次のような注意があります。
・相続人へ財産継承の表現は、「相続させる」とする。(不動産など単独登記が可能)
・相続人以外への財産承継は、「遺贈させる」とする。
・土地に関しては、「所在」と「地番」で指定する。
・建物は「所在」と「家屋番号」で指定する。
それと<その他すべての財産の承継人>の指定を、必ず行うようにしてください。
この指定をしておくことにより、万が一、遺言から漏れていた財産が後日発見されたときに、面倒な事態になることを防ぐことができます。
他に形式上の注意点として、遺言が複数枚にわたるときは、「契印」を押します。
この際の印鑑は、遺言書に押印した印鑑を使用します。
また自筆遺言証書は、相続開始後に遅滞なく家庭裁判所の検認を受ける必要があります。検認とは、遺言書の保存を目的とする行為です。発見時の遺言書の状態(内容)を家庭裁判所が確認し、偽造されたりすることを防ぐために行います。
遺言書の効力の有無などを判断するものではありません。従って、検認後に遺言書の効力が争われることもあり得ます。
このため遺言は封入し、遺言書と同じ印鑑で封印しておきます。加えて、封書もすべて自書し、遺言書と同じ日付を書いておきます。
また封筒に、「開封前に家庭裁判所へ提出すること」など、検認を促す文言を入れておくと尚よいでしょう。