遺言は、民法に定められる<要式行為>です。
民法960条には「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。」と、定められています。
遺言は本人の死後、その効力を生じます。その時には、その遺言の真偽あるいは真意を確認する事はできません。その為、厳格な要式が定められているのです。
遺言ができるのは、満15歳に達している者です。(民961)
成年被後見人についても、正常の精神状態に戻っているときは、どの方式によっても遺言が可能であると定められています。しかしその場合は、医師2人以上の立会いが必要となります。(民973)
遺言の内容は原則自由ですが、遺留分による制限があります。
また公序良俗に反する内容は、無効となります。
まず遺言の方式ですが、「自筆証書」、「公正証書」、「秘密証書」の普通方式3種類と、特別方式4種類の合計7種類あります。(民967)
一般に多く利用されているものは、「自筆証書」と「公正証書」になります。
その中でも今回は、「自筆遺言証書」についての解説を行います。
自筆遺言証書の法的要件は、民法968条に定められています。
そのポイントは、次の通りです。
①自書
「自書」とは遺言者自らが手書きをする事を言い、ワープロ等で書くことは認められていません。
筆跡により、本人が書いたものと判断する事が出来るためです。
仮に何らかの理由により字が書けない人は、他の方式で遺言するしかありません。
②日付
一般に日付は、年月日で示されるのが普通です。
しかし「還暦の日」であるとか、「定年退職の日」など、日付が特定できる表現であれば、必ずしも年月日で示されている必要はありません。
だだし「平成30年9月吉日」など、日付が特定できないような書き方では、要件を満たしません。
③氏名
遺言者が誰であるのかを特定するためのものであるため、本名(戸籍上の名前)でなくとも構いません。
例えばペンネームや芸名などでも、本人が誰であるかが分かる範囲であれば構いません。
遺言者が特定できるなら、姓または名のどちらか一方でも有効です。
④押印
遺言書への押印と言うと、つい実印と思いがちかと思われます。しかし遺言書に押す印鑑は、必ずしも実印である必要はありません。
認印でも良いですし、それだけではなく拇印や指印でも認められます。
⑤加除訂正の方法
他人による遺言書の改ざん防止の観点から、加除訂正の方法は厳格に定められています。
条文には「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」(民968②)とあります。
加除訂正に必要が生じた場合は、書き直す方が無難です。